2021年8月3日 21:10
余命1年、40歳独身女性がホストと出会い…奇妙な交流を描く『余命一年、男をかう』
笑って楽しく読みながらも、自分の無意識の偏見や先入観に気づかされる。吉川トリコさんの新作『余命一年、男をかう』は、そんな刺激的なエンタメ作品だ。
余命宣告を受けた40歳独身女性。待ち受けていたのは奇妙な出会い。
「そもそもは、余命宣告を受けた若いヒロインが青年に金を払って恋人になってもらう映画を観たんです。観終えた後に妹と話すうち、自分ならこうするかも、というのが浮かんだので書くことにしました」
40歳の片倉唯の趣味は節約で、老後のためにせっせと貯蓄している。だが子宮がんで余命1年と発覚。ショックを受けると同時に、どこかほっとしている姿がリアル。
「今は長生きに対してポジティブなイメージが薄まっているし、唯のように大切な人やペットもなく、老後の心配ばかりしている人は、ふと楽になるかと感じました。子宮がんにしたのは、『子宮を取ると女でいられなくなる』と言う人がいるなど、あまりに子宮が神聖化されていることに違和感があって。もっとフラットに考えたかったんです」
そんな唯が出会ったのはピンクの髪のホスト青年・瀬名。コロナ禍で自身の仕事も実家の飲食店も危機的状況な彼に、唯は衝動的にぽんと大金を出し二人の奇妙な交流が始まる。