さらに、彼は大人の男なら持っているであろう恐れや後悔がない人物。そういう強いエネルギーを彼女は深く愛していたんだと思いますが、同時にそれが彼女を傷つけてもいたのです。
そして、彼女のなかで矛盾を生み出したもうひとつの理由は、彼女の母性。劇中にも「あなたって子どもみたいだから、私が面倒みないといけないのよ」といったセリフがあるように、外でどんなに悪いことをしても、帰ってきたら受け入れてしまう。彼女はフェミニストではありましたが、彼を前にすると理屈では説明できないような行動を取ってしまっていたので、「愛とは本当に複雑でコントロールできないものなんだ」と改めて気づかされました。―そんな2人の関係性を描くうえで、気をつけたことはありましたか?
監督エリノアはいつでも彼を捨てることができたのに、最後まで別れることができませんでした。でも、彼女は決して被害者ではなかったので、そういった部分はしっかりと描きたいなと。こういう女性になりたいと思ってなったわけではないけれど、彼女自身がああいう男性を選んで自分の人生を歩んでいったのだという彼女の姿は見せたかったところです。
いまの私たちなら乗り越えられる
―同じような矛盾を抱えている女性は、現代でも意外と多いのではないかなとも感じました。
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