2021年9月16日 20:10
斎藤工「人生は腐敗しないように発酵していくゲーム」 発酵にハマる深いワケ
俳優としてはもちろんのこと、監督やプロデューサーとしての顔を併せ持ち、活躍している斎藤工さん。様々な角度から映画に携わる道を選んだ背景には、自身の映画体験があった。
「たまに、自分しか知らないはずの孤独みたいなものが映り込んでいる作品があるんです。たとえば、学生時代にメキシコ映画祭で地球の反対側で作られた映画を観た時には、生きている環境や文化は違えども、人間の根幹にある苦しみや悩みは一緒だと知りました。誰かの頭の中で着想、具現化された作品が、心の奥にあるひだに触れるような体験は、人生の養分になっているし、救われる感情もありました。人と共有することで初めて価値が生まれることが芸術の面白さだし、僕も、その体験を届けたいと思ったんです。被災地に赴く移動映画館のプロジェクト“cinema bird”を始めたのも、そうした想いからでした」
年を重ねることで変化する人生観が、映画へのアプローチの仕方にも変化を及ぼしているという。
「20代の頃は、自分の人生の濃度ばかりを意識していました。
それが30代になると、次第に“自分のいなくなった後に何が残せるのか”“過去から受け継がれてきた本質的なものとは何だろう”というところに想いを馳せるようになったんです。