2021年10月11日 21:10
綿矢りさ、マイペースな主人公に込めた思い 友情と恋の行方描く『オーラの発表会』
萌音も、あまりにもできないことが多い海松子が見捨てられなくなる。二人みたいに、言いたいことを言い合っても続く関係っていいなって思いました」
彼女たちの関係がなんともいい味わい。さらに、海松子にアプローチしてくる男性が2人登場。幼馴染みの奏樹(そうじゅ)と、社会人の諏訪(すわ)だ。
「人は恋愛を通じて分かることも多いし、彼女がどんなふうに男の人に接するか興味がありました。でも海松子は恋愛の初動のときめきが薄いので、自分の気持ちに気づくまでに時間がかかるんですよね。書きながら、私も恋の行方がどうなるか分かっていませんでした」
やがて海松子は、なぜかオーラが鳴らせるようになって…というところから、物語は新たな展開へ。
「一人でいることも、誰か他の人といることも楽しいけれど、どちらかに偏ると苦しくなる。
どちらがいいとも一概に言えないなと、今回の小説を書いて思いました」
海松子が得る気づきに、大きくうなずきたくなる一冊です。綿矢りさ『オーラの発表会』自宅から通える大学に進学したのに、両親から一人暮らしするよう宣告された海松子。新生活の中でマイペースだった彼女に訪れる変化とは。集英社1540円
わたや・りさ2001年、『インストール』で文藝賞を受賞しデビュー。