2021年10月25日 22:10
“邪教の子”が示す本当の意味とは…ニュータウンに蔓延る、新興宗教を描く小説
カルトなコミューンや疑似家族は現代における普遍的なテーマでもある。大好きな『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督もこういうテーマばかり取り上げています」
実は、連載時とはエンディングも変えたそう。
「葛藤はあったんです。でも変えた以上、この結末が面白いと言ってくれる読者さんがいるとうれしい」
〈邪教の子〉。その言葉が示す本当の意味が最後にガツンとくる。
「僕も子ども時代にニュータウンで育ったので、当時の感覚を思い出しながら書きました。自分のリアルタイムの情報というか、子ども時代や学生時代の体験や記憶を物語に放り込むことに、それなりの意味が出てきたなという気がするんです。さまざまな出来事がまったく社会と無関係に起こったことではないのだなとわかってきたので。
エンタメとしてのベタを狙いつつ、それを安易に流用したくはないという自分の中のめんどうくさいせめぎ合いと闘いながら、今後も書いていきたいですね」
『邪教の子』前半は慧斗が過去を振り返る形で、後半は、彼自身が新興宗教に家族を壊された子だというテレビディレクター・矢口の視点で描かれる。文藝春秋1870円
さわむら・いち作家。