2021年12月30日 20:00
『ボクたちはみんな大人になれなかった』×『新聞記者』両監督が語る“配信の可能性”
そこで小沢健二さんの曲が立て続けに流れるんですけど、あれはギークな人じゃないとできない選曲だなと思って。あれは森さんが?
森:そうですね。あそこで一気にあの時代に帰らせたかったというのがあって。小沢健二さんの『犬は吠えるがキャラバンは進む』というアルバムを曲順にどんどんかけていきました。今回、時代をどう描くかが大きなポイントで。本来ならTSUTAYAができる前、まだ東海銀行だった頃の渋谷のスクランブル交差点をバンッ!と見せたりするのが王道なんでしょうけど、いろいろ事情もあって、そうはいかず。逆にラフォーレ原宿とか、渋谷のタワーレコードとか、主人公のパーソナルな場所をおさめていくことで、二人の足跡を辿れるように切り替えました。
藤井:変に時代劇を撮るより、みんなの記憶にある「過去」の街を描くのは大変ですよね。
画という意味では、現代を映す中で出てくる無人の新宿の街も印象的でした。
森:あれはちょうど’21年1月の緊急事態宣言下に撮影しました。だから偶然の産物ではあるんですけど、確かに画力のあるものが撮れましたね。
藤井:あのコロナ禍の街並みが、主人公の孤独感と重なって見えたんですよね。