2022年1月24日 20:10
優しく誠実な夫が離婚届を残し失踪…あるカップルの物語を描く『求めよ、さらば』
「片想いでも不妊治療でも“求めよ、さらば与えられん”というわけにはいきませんよね。そのことがひっかかっていて、タイトルにしました」
望みが叶って好きな者同士で結婚したはずの志織たち。ではなぜ、誠太は姿を消したのか。
「書いているうちに、これはコミュニケーションの話でもあるな、と感じました。相手を傷つけないように気遣っていると、なかなか一歩踏み込めないことがあります。それで表面的にはうまくいっていても、何かあった時に乗り越えられる力は育ってないですよね」
“対等に傷つけ合うことの価値”に気づいた、と奥田さん。
「互いに相手を傷つけるかもしれない覚悟で求めないと得られないものもあると思いました。ただ、欲しいものが得られたらハッピーエンドなわけじゃない。
それでようやくスタート地点に立てるのかもしれません」
さて、もし惚れ薬があったら、あなたは使いますか?
『求めよ、さらば』翻訳家の志織の夫・誠太は、友人たちが羨むほど理解があり誠実な男性。しかしある時、彼は置き手紙と離婚届を残して失踪した――。KADOKAWA1760円
おくだ・あきこ2013年「左目に映る星」で第37回すばる文学賞を受賞しデビュー。