くらし情報『井上芳雄「全方位に好かれるのは無理」 30代で気づいたこと』

2016年11月11日 08:00

井上芳雄「全方位に好かれるのは無理」 30代で気づいたこと

いまになってわかるのは、周りが僕にちやほやしてくれていたのは、僕の努力や才能だけじゃなく、若かったからなんですよね。若いっていうのは、それだけで存在価値があるんです。いまそれがなくなって、以前とは違う求められ方をされるわけです。トーク番組では、ミュージカルのことを知らない方々にも面白いと思ってもらいたいな、と。

――求められていたのが才能よりも若さだったと自身で認めるのは、キツかったと思うのですが?

井上さん:気づいた瞬間は唖然としました。ただ、若くない自分を認めることで、俳優としてできることも増えるんです。例えば、以前は実感できなかった老いの恐怖を、いまは芝居で表現できるかもしれない。人生経験があまりないまま20歳でお芝居を始めた頃は、役の深い心情が理解できない。
演出家に「底が浅い」と怒られても、どうしていいかわからない。稽古場に行くのが辛くて、早く年をとって、世の中の真実を知りたくて仕方なかったです。

――年をとるとできなくなる役がありますが、その怖さはなかった?

井上さん:こう言うと驕っているように聞こえるかもしれませんが、30歳くらいまで、僕はミュージカル界で独占企業だったと思うんです。

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