2016年11月21日 21:42
ぞくぞくする読み心地…23区に眠る怪異譚がモチーフの『東京二十三区女』
そこで、霊感のあるフリーライターの原田璃々子と、彼女の大学時代の先輩で民俗学の元講師である島野仁が、ルポ企画の下取材のためにいわくつきの街を歩くという連作スタイルに。オカルト肯定派と否定派という対立も含めて、名コンビになっているのが面白い。
「古い地図を片手に僕自身が歩き回り、取材時に頭に浮かんだことや目に留まったものを、そのルートをたどる璃々子たちの会話などに織り込むようにしました」
街だけでなく、映画からモチーフをとったものもある。
「フランスの短編映画『ふくろうの河』(原作アンブローズ・ビアス)の逆バージョンをやってみたくて書いたのが『港区の女』です」
ちなみに、本書にはそうした“東京をめぐる謎”だけでなく、物語全体を揺るがす大きな秘密がある。それがラストで明かされるのだが…。
「果たしてこれが答えなのかどうか。僕もまだ真相はわかっていない。残りの区の物語も書く予定ですが、その中で見えてくるかもしれません」
◇多くの文献を参考に、リアリティあふれる物語が誕生。
また、カバー絵に仕掛けられたある秘密には、仰天する人もいるはず。目を凝らして。幻冬舎1500円
◇ながえ・としかず映像作家、小説家。