くらし情報『芥川賞作家・上田岳弘「寂しさはもう役割を終えたと感じています」新作のテーマは“穴”』

2022年6月13日 19:10

芥川賞作家・上田岳弘「寂しさはもう役割を終えたと感じています」新作のテーマは“穴”

ただ、寂しさはもう役割を終えたと感じています。満たされない思いはなくならないけれど、寂しさを解消しようと自家中毒を起こし、自殺などが起きている。これからは寂しさを紛らわす方法を探るのではなく、一人で穴を掘って勝手に進んでいいですよ、と提案したほうが優しく響くんじゃないかという気がします」

作中、〈現代人は目的中毒〉という言葉も出てくる。しかし人生は、努力して目的を達成すれば幸せになるとは限らない。

「正解や成功、到達点というものは存在しないんだと一回了承した上で、自分は何を譲って何を取るのかを考えていかなければいけない」

そうした事実を改めて突き付けられた時、馨の心に芽生える思いとは。この最終場面まで書ききった上田さん自身にとって、“一人で穴を掘る”とはどういうことだろう。

「とにかく今は小説を書きまくっています。その一瞬一瞬の集まりが、生きている実感に繋がるような気がしています」

現在は、意外にもストレートな恋愛小説を執筆中。
こちらも楽しみだ。

『引力の欠落』大金を稼ぎながらも空虚さを抱く行先馨は、奇妙な招待を受け、世界を支える9つの要素を担うと語る人々と出会う。AlexaとGoogle、セロトニンなど現代的モチーフをちりばめた壮大な一夜の物語。

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