2022年6月20日 19:10
甲本雅裕「強烈に怖くて強烈に逃げたくなった」 約4年ぶりの舞台は濃密な二人芝居
そして、ちょっと笑いを交え「作家が何を思ってこれを書いたのか、会ったこともない僕は知らんよって思いながらやっています」とも。
「この戯曲にはト書きがないんです。書かれているのがセリフだけならば、それ以外は自分たちで勝手に探してくよっていう考え方をしていて。僕たちがやっている“芝居”ってなんだろうといったら、そういう言葉に書かれていないところを考えて作っていくことじゃないのかなって」
そんな言葉で思い出すのは、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で甲本さんが演じたヒロイン・安子の父親だ。空襲で店も妻も母も失い、瓦礫の中で人目も憚らず子供のように泣きじゃくる場面がある。
「時代背景を考えると、日本男児なら声を殺してすすり泣くのが正しかったのかもしれない。でも、あの場面に身を置いた瞬間、自分はそうだなって思っちゃったんで、まずはそれを全面的にぶつけてみようと思ったんです。監督は、『そう演じるとは思わなかったけれど、いいと思ったのでOKしました』と言ってくださり、それならよかった、と」
穏やかな人柄の根底に、芝居に対する揺るぎない信念を感じる。
「自分の役割は作品のテーマを伝えることじゃなくて、観た方に、こういうテーマの作品なのかなって思ってもらうことなのかもしれません」