2022年6月26日 20:40
国を立て直すために尽力する男女の姿を描く、中国歴史エンタメ長編『戴天』
――。裏切りあり、計略ありの二転三転の話運びで読者を否応なく引き込む。
現代日本に通じる話を意識したという千葉さん。
「安史の乱以降国が傾いていく様子は、バブル期以降の日本に通じると感じていて。辺令誠のように、権力に支配された人の怖さは今の時代も同じですよね。それにこの話では、ホモソーシャルな社会での男性の生きづらさも書こうと考え、それで男性器にコンプレックスを抱く崔子龍や宦官、男性社会に属さない僧侶を登場させました」
武力の衝突から心理戦から胸を打つドラマまで盛り込まれ、息をつかせぬ面白さ。国を立て直すために尽力する男女の姿から浮かび上がるのは、英雄とは何か、という問いだ。
「私の世代はサービス残業といった滅私奉公が美徳のように言われてきましたが、それで人生が潰された人は多い。
ですので、私が書くなら自己犠牲を厭わない英雄ではなく、自分を大切にする英雄を書こうと思いました」
彼らの勇気をぜひ、見届けて。
『戴天』政治が腐敗し安史の乱目前の唐。軍人の崔子龍は陰の権力者・辺令誠に対抗するため、僧侶の真智は官僚の不正を暴くため行動を起こす。文藝春秋1980円
ちば・ともこ1979年、茨城県生まれ。