「きっといる」と思わせてくれる怪しさと魅力アリ! 怪異を巡る、二人の男の見聞録
怪異を引き寄せる男と、追う男、日常の隣に潜む不思議を巡る物語『となりの百怪見聞録(ひゃっかいけんぶんろく)』。
「昔から怪談やホラーなど不思議な話が好きで、いつか描きたいと思っていました。私自身はだいぶ怖がりなのですが(笑)」
四季折々のスープと人間模様を描いた『オリオリスープ』の著者、綿貫芳子さんが満を持して挑んだテーマが、怪異。最新巻に収録されている「遠野物語」をモチーフにした短編「まよひが異聞譚」から、イメージを膨らませて連載化したのがこの作品だ。装丁家でゲイの片桐甚八は、“オバケ先生”と呼ばれる高名な日本画家の原田織座(おりざ)に、なくした財布をとある方法で取り戻す手助けをしてもらう。織座に惚れてしまった甚八は、なぜか怪異に好かれ不思議な現象に遭遇しやすいようで、“あちら”の世界に魅せられている織座の道楽に振り回されることに。
「ふたりとも『オリオリ~』に登場しているキャラクターで、具体的に触れる機会はなかったものの、結構細かく設定を考えていたんです。自分でも忘れていたことを思い出したり、実はこういう人だったのかと気づいたりしながら描いています」
あちら側への入り口となるのは、古本にあった見知らぬ人の書き込みや、不意にポスティングされる情報の少ない移動販売のチラシ、いつも釣り銭が置き去りにされている古い自動販売機など、誰もが日常で身に覚えがありそうなことばかり。