色褪せることのない名作を数多く残した、伝説のデザイナー・倉俣史朗に迫る展覧会
1960年代以降のデザイン界で、世界的に高い評価を受けたデザイナー倉俣史朗。彼は当時、一世を風靡した飲食店や服飾店の店舗デザインを手がけ、独創的な家具も発表。その作品は日本以上に、ヨーロッパで広く注目された。しかしキャリアの絶頂期だった’91年に、56歳の若さで、心不全により突如亡くなってしまう。その早すぎる死のため「伝説のデザイナー」とも呼ばれた彼の、作品と人物像に迫る展覧会が始まる。
倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
倉俣は、父の勤務先である本郷の理化学研究所内の社宅で9歳まで育つ。当時の理研は研究棟から工場、テニスコートも完備されたひとつの街で、建物内には当時珍しかった洋式トイレや大理石のエントランスホールがあり、実験用のガラス瓶や金属も身近だった。倉俣と聞いてアクリルやガラスなどの素材を思い浮かべる人も多いが、それには幼少時代が大きく影響していると考えられる。
本展では独立前のアパレル会社「三愛」時代の仕事に始まり、後の年代を4パートに区切り、彼の仕事をテーマごとに紹介する。なかには「倉俣史朗の私空間」として、愛蔵の書籍やレコードなども展示。エピローグでは、イメージ・スケッチとあまり公開されてこなかった夢日記や言葉をまとめて紹介し、倉俣史朗のデザインとその神髄を検証する。