くらし情報『「苦しいなら逃げてもいい」。20代の臨床心理士が、我慢を美しいと考える日本人に伝えたいこと』

「苦しいなら逃げてもいい」。20代の臨床心理士が、我慢を美しいと考える日本人に伝えたいこと

2018年4月2日 07:17
 

筆者が臨床心理士のKANAの存在を知ったのは、何気なくインスタグラムを見ていたときだった。そこでたまたま見つけたのが彼女の、渋谷で統合失調症を抱える女性と出会ったときの話を綴った投稿で、現在までに27,500以上の「いいね!」を集めている。知り合いに伝えるつもりで発信した彼女にとって、その反響は予想外だったという。今回Be inspired!は、20代の臨床心理士である彼女にコンタクトをとり、彼女が自分自身の目を通して、人に悩みを打ち明けにくい日本社会をどう見ているのか話を聞いてみた。

目次

・逃げたっていい。自分を肯定することが大切
・自分を他者と比べてしまう人たちへ
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少し前には最近でも耳にする“メンヘラ*1”という言葉がネットスラングとして使われるようになり、精神疾患が身近なものになったようにも思える。しかし、その言葉のせいで病気を軽いものとしかとらえられない人たちもいるようだ。「“メンヘラ”という言葉が流行ったことが関係あるのかはわかりませんが」と前置きをしつつ、彼女はこう話す。

精神科は怖いっていうイメージがあったかもしれないけど、すごく精神科の敷居が低くなってきています。眠れないとかちょっと落ち込んじゃったとかっていうのでも割と足を運びやすくなったし、その“メンヘラ”っていう言葉ができて「病むのってこう分類化されるんだ」って、救われた人もいると思うんですよ。「私、こういう傾向があるんだよね」ってある種での自己紹介にも使いやすいし、若者が扱いやすいワードじゃないでしょうか。それはいい傾向ではあると思うんですけど、その反面、間違った情報によって精神疾患への理解がそこで止まったり、その軽い言葉のイメージだけが一人歩きしてしまったりしたこと。だから「私、メンヘラなのかもしれない」「ちょっとおかしいのかもしれない」って悩んでしまう人もいると思います(*1)メンタルヘルスの悩みを抱えている人をさす俗語

逃げたっていい。自分を肯定することが大切

臨床心理士として働くKANAに次に聞きたかったのが、彼女が現代の日本社会について感じていること。そこで話に出てきたのが大ヒット映画『アナと雪の女王』。同映画のテーマ曲の「ありのままで〜」という日本向けの訳詞は2014年の新語・流行語大賞のトップ10に入るほどの人気ぶりだった。最近上映されている人気ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』でも共通しているのが、挿入歌に「これが私だ」という歌詞があることだという。そんな歌詞が人気を呼ぶのは、「日本社会で生きる人が簡単に“ありのまま”でいられないから」だと彼女は指摘する。

「自分らしく」とか「ありのまま」でいるとか「これが私だ」っていうフレーズがすごく日本に生きる人の胸に響きやすいって思って。でもそれってできてないから。できてないことってすごく響くじゃないですか。できているなら普通のことになってしまいますが、自分がすごく負い目に感じていたり、「私全然自分らしくない」とかっていうのを感じてしまっていたりするから、そこが心にすごく響いているんじゃないかなって
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私の人生もそうなんですけど、辛いことも悲しいことも嬉しいこともすべて絶対に意味があって、あの時間にあの人と知り合ったこととか、あの人と喧嘩したこととか、そういうすべての選択に必ず意味がある、それが今の自分になっている。そのようにすべてに意味があると考えると、おのずと今の自分を受け入れられるようになる。あのとき自分はあの選択をしたから今の自分があるって受け入れやすさにもなると思うんです

自分を他者と比べてしまう人たちへ

インターネットに情報が溢れ、急速に世の中が変化しているように思えて、あるいはまわりの人がそれぞれの分野で活躍しているように見えて、自分は取り残されてしまうのではないかと焦っている人もいるのではないだろうか。筆者がKANAと話すなかで最も印象に残ったのが、そんな「変化」に対する彼女の見方だった。

変化って側からみるとすごく大きいものに見える。たとえば親友のAちゃんがあのときから急に変わっちゃったとかってあるじゃないですか。でも実際にAちゃんは何も考えてなかったり、日々生きているなかでちょっとずつ変化してきただけかもしれない。Aちゃん本人にその自覚はなかったりもする。他人から見たら大きくても「変化」って実は小さいもので、毎日のすごく地味な積み重ねなんです。でもなぜか人って大きな変化を求めがちで、「こういう悪いところを大きく変えなきゃ」と思ってしまう。だけどちっちゃい行動を意識するだけいいし、その場で足踏みしてるだけでもいい。足踏みだけでも筋肉がついてくるし、いつかのタイミングで前に進めるかもしれないしって思いますね
「隣の芝生は青い」ということわざがあるように、他者がよく見えてしまうことはいつの世にもあるけれども、それは人の内面が他者からは見えないゆえに感じるのかもしれない。したがって、自分より優れているように見える他者を“基準”にして焦るのではなく、まずは彼女が強調していたように、自分自身の選択したことや感じていることを「肯定する」のが大切ではないだろうか。それが自分の生きやすい環境を見つけることにつながってくる。

KANA

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