くらし情報『消費者の「食べたい」に合わせて農家が食品を生産する、という“間違った”構造に終止符を打つレストラン』

消費者の「食べたい」に合わせて農家が食品を生産する、という“間違った”構造に終止符を打つレストラン

2018年4月9日 04:01
 

近年、環境や人体への影響を見直し、食の生産背景が注目されている。街のレストランは、顧客満足のために「美味しさ」だけでなく「安全」を求め、スーパーでもオーガニック商品のコーナーが作られたりと、少しづつ変化がみられている。そのなかでも注目されているのが「農園から食卓へ」を意味する「ファームトゥーテーブル」というスタイルのレストラン。農園から採れたての新鮮な野菜を調達し、それを調理してお客様に提供する、一見理想的に思えるこのスタイル。しかし、元アメリカ大統領オバマ氏も訪れるアメリカ最先端のレストランのシェフは、この「ファームトゥーテーブル」がもはや正義ではないことを指摘している。そして、食の未来の姿を提案する。

関連リンク

・ベトナム中部の街「ダナン」でやりたい6つのこと
・【ねこのふらり一人旅 #21】街を歩けば世界遺産!ガウディ建築に酔いしれる
・ブッシュ元米大統領、妻バーバラ夫人の最期を見守った“献身愛”
width=“100%

そこで最近注目を浴びているのが冒頭で述べたファームトゥーテーブルというスタイルのレストランだ。ファームトゥーテーブルとは、直訳すると「農園から食卓へ」という意味。このスタイルのレストランでは農園で採れた野菜が直接レストランに運ばれ、調理されたものが提供される。そうすることで、食べる人は、作り手のわかる安全な野菜を新鮮な状態で楽しむことができるのだ。このファームトゥーテーブルからは、とても正しい仕組みのような印象を受ける。実際、ファームトゥーテーブルを実践するシェフは自分たちの取り組みに胸を張る。しかし、アメリカ・ニューヨークにあるレストランBlue Hill(ブルーヒル)のシェフで、10年以上世界中の農業コミュニティについて研究をしているダン・バーバーは、ファームトゥーテーブルでは食の根源的な問題を解決できていないと指摘する。彼がシェフを務めるBlue Hill(ブルーヒル)は「ファームトゥーテーブル」スタイルのレストランとして有名だが、なぜこう指摘するのだろうか。

「食べ手の都合」から逃れられないファームトゥーテーブル

width=
ダン・バーバー
そもそもファームトゥーテーブルは、食べる人がより新鮮で栄養価の高い食べ物を食べられるようにと考えた末に生み出された、農業流通システムである。実際、多くの場合は周辺の農家から直接仕入れを行うため、食べる人が嫌がる不健康な農業が行われていたらすぐに明らかになる。よって農家は注意を払い、さらに比較的フードマイレージも低くすることができるために、あらゆる食の問題を解決する取り組みとして知られている。Blue Hillの場合はレストランのそばに自分で農園を運営し、そこから仕入れを行っているため、一見すればファームトゥーテーブルの仕組みをとっている。だが、バーバー氏が主張しているのは、「食の作り手と食べ手の力関係」である。近年の農業は、消費者の需要と嗜好に合わせて、多少自然の摂理に抗ってでも生産を増やしてきた。たとえば、ドキュメンタリー映画『FOOD.INC』で指摘されている鶏の飼育シーンでは、大量のひよこが小さな空間に敷き詰められることで、歩けなくなるようにして身体を肥やさせる。そうする理由は、食べる人が丸々と肥えた鶏肉を欲しているからだ。

width=“100%

レストランBlue Hillを拠点とし、長年食と向き合ってきたバーバー氏が注目したのは、フレンチやイタリアン、スパニッシュ、中華、といった長い時間をかけて発展してきた世界の食文化である。地域でよく栽培される野菜は、最も旬な時期を知ったその地域の人によって調理され、楽しまれてきた。2013年に世界遺産に認定された和食も、その特徴として「海、山、里と表情豊かな自然が揃っているため、各地で地域に根ざした多様な食材が用いられていること」と「素材の味を引き出す調理技術と道具が発達していること」が一番にあげられていた。例えば、日本の田園地帯では、春にはウドやたらの芽などの山菜を採り、夏は川で若鮎を塩焼きにし、秋は山できのこ狩りをして、冬は日本酒と酒肴で身体を温める。そんな四季の風景がある。このように、その地域の気候や環境、農業システム全体が直接反映されているような料理が、未来に残されるべき食の姿だとバーバー氏は指摘する。食材単体をどこから仕入れるか、という視点だけではなく、農業システム全体に思考を凝らした食を彼は、「第三の皿」と呼んでいるのだ。残念ながら、バーバー氏の住むアメリカには、長く地域に根ざすような食文化は育っていない。しかしだからこそ、アメリカでこのような食のシステム全体を考えた地域に根ざした食を作ることが、自らの使命だと彼は語る。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
子どもの教育アンケート
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
instagram
instagram
twitter
twitter
ピックアップ
上へ戻る

Copyright © 1997-2018 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.