2016年1月18日 21:00
【シネマモード】思わず応援したくなる脇役に注目『俳優 亀岡拓次』
そんなタイプのイケメン俳優とは正反対で、人生にも仕事にも恋にも不器用な亀岡。彼の人生は仕事で入り込むフィクションの世界と、現実の世界を行ったり来たり。観ているこちらも、その境界線がわからなくなり、不思議な浮遊感を覚えます。きっと、不器用な彼はその切り替えがそれほど上手くいかないから、いつもだるそうで、体温が低そうで、ちょっとぼんやりしているのかも。
そんな彼の七変化も、本作の見どころ。神社のホームレスから、ヤクザの子分、時代劇の泥棒、フィリピンパブのお客、そして世界的監督に請われて演じたモロッコの民まで。とにかく何でもしっくりフィットしてしまうのです。私たちのように、基本的に好きな服を選んで生きていける場合は何が似合うか、何が似合わないかが明確な方が楽ですが、俳優たちは、何でも似合うことが武器になるはず。
主役級ならば、ある程度その人の特徴があってもいいけれど、小さい役をいくつも演じる必要のある脇役たちは、なるべく多くの役柄に染まれるよう、色がなく、特徴が無いほうがいいのかもしれません。それを意識してなのか、もともとそうなのか、亀岡は普段の様子もかなり地味。もしかして、次に呼ばれたときのために、自分を抑え続けているうちに、地味男になったのだとしたら。