2017年5月5日 17:30
「おうちデート」で観たい! ファッションや音楽も楽しめるオススメ恋愛映画
中でも本作は、上の2作に比べると、かなりシンプルでオーガニックな作品であり、その分自然な形で挿入される歌はメッセージ性が濃く、父親のバイクを借りて出かけるドライブデートのシーンや、ダブリンの街角を散歩するなどの、2人のささやかな「幸せ」もあたたかく響いてくる。
カーニー監督の作品の背景には、自身の生い立ちや、アラン・パーカー監督作『ザ・コミットメンツ』に深く影響を受けていることもあり、ダブリンを舞台した労働階級の人々や、移民などの社会的マイノリティの人々を描いたものが多い。しかし、恵まれた社会環境では決してないものの、あえてその背景を美化したり、またはよりデフォルメして描いているわけではなく、それぞれの置かれた状況や抱える問題を“ありのまま”に受け止めた上で、そこで奏でられる音楽がそれぞれの人物を「癒し」ていく。よって、作品内の楽曲たちには悲しみも喜びもそこに含まれており、そしてそれらはあまりにも清々しく、素晴らしいものとなっている。
本作で登場する2人はカップルではない。現実的に言うと、2人はカップルにはなれないのだ。なぜなら、女は祖国・チェコに夫がおり、現在はダブリンのアパートで1人の幼い娘と自身の母親を暮らしているから。