2018年3月28日 20:00
【シネマモード】大切なものは“不変” ファッションも、人生も『BPM』
1980年代に、世界情勢をある程度認識できる年齢になっていた多くの者にとって、HIVの問題はとてもショッキングでした。
80年前後、同性愛者を中心に謎の病にかかる人が増え、それはどうやらウィルスであり、不治の病であるというのです。情報はどれも不確実で、恐怖をあおるものばかり。しかも年々患者は急増し、恐ろしいうわさばかりが広がる状況に、世界は震えていました。あの時代の不穏な空気を、私はいまでもしっかりと覚えています。
にもかかわらず、セレブリティを含む感染者や死者が多かったアメリカをはじめ、各国は十分な対策を取っていませんでした。なぜなら、患者にゲイ、麻薬中毒者、娼婦ら社会的に差別される者たちが多かったから。それは、映画『BPMビート・パー・ミ二ット』の舞台となっているフランスも同じ。
ウィルスはHIVと名づけられ、感染者がAIDS(後天性免疫不全症候群)と呼ばれる病に罹患することが分かった1982年以降も事態はさして変わらず、1996年まで効果的な治療方法も見つかっていませんでした。
『BPMビート・パー・ミ二ット』は、極めて閉塞した状況にあった1990年代初めのパリで、偏見や差別と闘いながらも、政府や製薬業界、社会の意識を変えるために抗議行動を繰り広げた活動団体「ACT UP-Paris」