2019年9月13日 17:00
【ネタバレあり】『アス』を徹底解説!ジョーダン・ピールの世界を読み解く5つのキーワード
とアドバイスされたという)の手によって、チョップド&スクリュードの流儀で曲のピッチが落とされた上にストリングスのおどろおどろしいアレンジが加えられて、まるで「もう一つの世界」の「I Got 5 On It」のように生まれ変わっている。
というわけで、本稿では『アス』のテーマソング「I Got 5 On It」にあやかって5つのキーワードから、「いまのところ傑作しか撮っていない男」ジョーダン・ピールの最新作『アス』の世界を読み解いていきたい。
キーワード1:ハンズ・アクロス・アメリカ
1986年の過去シーンから始まる『アス』。少女時代の主人公アデレードが見ているテレビの画面に映し出されているのがこれ。1986年5月25日、「アメリカ国内の貧困層及びホームレスを救おう」というお題目で、アメリカ中の人々が手に手を取って東海岸から西海岸までを一つに繋げたイベントだ。前年のUSAフォー・アメリカ『ウィ・アー・ザ・ワールド』とライブエイドによって大規模チャリティーへの機運が高まっている中で生まれたイベントだったが、開催当時からその偽善性を指摘する声も多く、今ひとつ盛り上がりにかけた。その結果が現在のアメリカ社会というのは笑えない冗談だ。