2019年10月11日 12:15
『ジョーカー』はスーパーヒーロー映画とハリウッドをハックした
であり「事件」だった。
『ジョーカー』は未来を切り開く存在になるか?
2020年以降、マーベル・シネマティック・ユニバースは映画とテレビシリーズの垣根を完全に超えて、ディズニーの新しいストリーミングサービスから新作を次々に発表していく。昨年のアルフォンソ・キュアロン『ROMA』に続く今年のスコセッシ『アイリッシュマン』の成功によって、映画というアートフォームにおいても、ハリウッドからストリーミングサービスへとその主戦場は確実に移行していくだろう。そんな時代に、フィリップスは『ジョーカー』を「あまりにも映画的モチーフが込められすぎた2時間の単独作品」として仕上げ、スーパーヒーロー映画を、ハリウッドを、ヨーロッパの歴史ある映画祭を、ハックしてみせた。
『ジョーカー』のクライマックスでは「持たざる者」たちであるゴッサムシティの民衆が蜂起する様子が描かれているが、『ジョーカー』という作品はこれまでのような環境を失いかけている「旧来の映画」の蜂起でもあるのだ。『ジョーカー』自体の発展性はフィリップスやフェニックスをはじめとする本作の主要スタッフによって否定されているが、アカデミー賞も射程に収めたいま、ここから一体どんな火がつくかはわからない。