2021年7月16日 14:00
【レビュー】『ブラック・ウィドウ』生身のヒーロー“ナターシャ・ロマノフ”に触れる最後の旅路
その後、ナターシャとエレーナがスパイ養成所“レッドルーム”に再び送られ、暗殺者となっていく様子は、女性シンガー・Malia Jがカバーする「ニルヴァーナ」の「Smells Like Teen Spirit」が流れるオープニングクレジットをバックにモンタージュされていく。
ナターシャが当時を思い起こしたのは、あのときと同じように “もう1つの家族”アベンジャーズがバラバラになってしまったからだろう。本作の舞台は、時系列でいえば『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)の直後。ソコヴィア協定をめぐりアベンジャーズが分裂、チームの存続を第一に考えたナターシャは当初アイアンマン側に着くが、キャプテン・アメリカの思いをくみ取り最終的には彼を逃がしたことで、彼女自身も追われる身となっている。
そんなナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウを約10年にわたり演じ続け、本作の製作総指揮も務めるスカーレット・ヨハンソンは、彼女のルーツを描くにあたり、数多くの監督候補の中からケイト・ショートランド監督に白羽の矢を立てた。『さよなら、アドルフ』『ベルリン・シンドローム』などの作品で、自由意思と尊厳を奪われた女性の内面描写に迫ってきた監督だ。