『石門』主人公の人生が投げかける、女性ゆえに直面する“石のように”重い扉
しかし、出産後は大学に戻りたいリンと、診療所の仕事がある母は厳しい条件だったーー。
妊娠期間と同じ10か月をかけて撮影された本作『石門』では、主人公のリンを通して、女性の前に立ちはだかる石のように重い扉を描き出す。
望まぬ妊娠と出産によって学校や仕事を中断せざるを得ず、元の進路に戻るため、出産後すぐに大学に戻ろうと考えるリンの姿がその一例だ。また、ドレスを着てデパートの前に立つキャンペーンガールや、リンの妊娠発覚のきっかけとなる、優秀な遺伝子を求める富裕層に向けた卵子提供ドナーが割のいい単発の仕事としてカジュアルに紹介される場面も。

若く健康な“女性性”を営利道具とみなし、売り物とすることにためらいのない空気は、世界各地で現在進行形で起きているジェンダー問題と根を同じくする。
フェミニズム映画が注目を集め、高い評価を受けている近年。その潮流が高まるよりも早く、少女の性被害を題材にしたデビュー作『卵と石』(12)、女子高校生の性が搾取される様を描いた『フーリッシュ・バード』(17)と、長年にわたって“女性と性”というテーマを描いてきたのがホアン・ジー監督と大塚竜治監督だ(『石門』に続き2作品とも日本初公開が予定されている)。