2014年10月8日 12:00
記憶の脳科学 (1) 低下したワーキングメモリ(脳のメモ帳)の機能は強化できるのか?
このように行動しながら記憶することを「ワーキングメモリ」と呼ぶ。たとえば普段の会話でもワーキングメモリを使っている。相手に聞かれた質問を覚えておくことで質問に答えられる。読書でも登場人物や、前の頁の場面を覚えていることで、文脈が理解できるのだ。
ワーキングメモリがうまく働かない例には、「2階に本を取りに行ったのにベランダの洗濯物に気づいて取り込むうちに、何をしに来たか忘れる」、「買い物に行ったのにセール品に気をとられて目的の物を買い忘れる」などがあげられるが、誰でも似たような経験があるのではないだろうか?
では、なぜ私たちは頻繁に目的を忘れるのか。
苧阪教授によれば「ワーキングメモリには制約がある。一度に使える情報処理の量は3つぐらい」とのこと。人は同時に多くの物事を処理することはできないのだ。
だが、ワーキングメモリを働かせるのが得意な人とそうでない人がいるらしい。いったいどこが違うのか?
講演ではここで、来場者にワーキングメモリの容量をはかるテストが行われた。
複数の文章を読みながら、文章中の1つの単語だけを覚えていくテスト(リーティングスパンテスト:RST)だ。以下の文章が1枚ずつスライドで投影され、来場者は声を出して読みながら、強調された単語(ターゲット語)