2014年12月5日 11:00
女の節目~人生の選択 (7) vol.7「初めての、自己顕示欲」【12歳】
「漱石も、鷗外も、吉本ばななもペンネームだよ、そのほうがプロの作家っぽくてカッコイイでしょ?」……どう答えてみても、露見するのは裏返しになった「本名で生きる自分」の冴えない現実。ペンネームをかぶせることによって覆い隠したい、恥ずかしさ、不自由さ、ダサさ、夢のなさ、素人臭さ、子供っぽさ、カッコ悪さ、なのである。
一方で、こんなこともあった。大好きなバンドのラジオ番組にファックスを送ったら、一人がその投稿を読み上げ、「ラジオネーム、◯◯◯ちゃん。へー、かわいい名前ですねー」と言ったのだ。妹と聴いていた私は、文字通り、子供部屋で飛び上がって狂喜した(かわいい中学生ですねー)。自分が送った質問に対する回答などろくすっぽ聴いていなかった。今、褒められたのは、私が自分で考えた、私の名前だ。
学校の成績や素行や身だしなみといった「正解」を知っている設問で花マルをもらっても、褒められているようには感じなかった。洋服や髪型はまだ親の厳格なコントロール下にあったから、容姿外見にお世辞を言われても自分の手柄とは思えなかった。小遣いで買った文房具などを友達から羨ましがられるのは、それに比べればかなり気分がよかったが、所詮は既製品の消費に過ぎない。