主人公エレンの謎(幼い頃にあった何かも伏線)と隠された能力、巨人を倒す方法、そして訪れる王政との対決……さまざまな複合要因が重なり、グイグイと読み進めさせられる展開は圧巻。迫力ある筆致が描く独自の世界観も必見だ。
○猫絵十兵衛~御伽草紙~
人の言葉を話し、酒を呑み、タバコを喰らう怪猫・ニタと、ネズミよけの猫絵を描き、猫語を解する絵師・十兵衛が主人公の、永尾まるの「猫絵十兵衛~御伽草紙~」。
その1人+1猫と、たくさんの猫が住み着く江戸時代の“猫丁長屋”を舞台に、さまざまな人情物語が展開していく。
著者によると古今東西の猫の民話を元にして描かれており、サラリと出てくる長唄や回向院をもじった“ねこう院”、また猫好きだったという歌川国芳をモデルにした師匠など、江戸風俗の描写が随所に盛り込まれているのが魅力のひとつだ。
そして何より著者が猫好きなのだろう、猫の描写がとても秀逸で、猫好きならずとも猫のイロハを知ることができるに違いない作品。ニタをはじめとする猫股という猫の妖怪の存在も特徴的で、化け猫などおどろおどろしい設定もあるものの、物語の大半は笑いのたえない摩訶不思議な人情話ばかり。