2017年9月9日 11:00
『関ヶ原』の岡田准一は、役の生き様をどこまでも気高く美しくする
岡田准一は、ただただ、懸命に生きた人として、その役を気高く美しいものにする。
対して、役所広司演じる家康が、太鼓腹に人間のどろどろとした欲望をたっぷり詰め込んで見えるので、よけいに、岡田三成が清らかに見えてしまう。すばらしい対比であった。
人間の美の法則(と勝手に呼びたい)に則り、『関ヶ原』で、岡田演じる三成は、世話になった秀吉への義を守る。途中、秀吉は、権力への野心に取り込まれ、倫理に反した行いをしはじめる。それを「悪」と捉えながらも、三成は最後まで、秀吉側に立つ。秀吉が危篤のとき、もっていた鞠を、亡くなってから三成が手にして、やがて、その糸で髷をきつく結ぶ場面は、静かながら、三成の強い想いが強烈に伝わってきた。
損得を生き方の選択の規準にしない三成。
たとえ自分が損をしても、一度決めたことを曲げずに、全力ででき得る限りやり遂げる。なかなかできることではない。その尊さを、岡田准一は体現する。なぜ、そこまで、一途になれるのか。
でもそんなことは当たり前とばかりに、あまり饒舌に語らない岡田准一。まったく語らないわけではなく、きちっと言わなきゃいけないことは語るものの、それを大それたことのようには決して語らない印象がある。