2017年11月1日 10:00
なぜ松雪泰子は舞台上で輝き増すのか? ネリー・アルカンに捧げる「自分の中にある闇」【第2回 役者の岐路】
もちろん演出家と作り上げていくものですが、いざ演じる瞬間は、舞台上にいる私たちのエネルギーがわりと中心になっているような気がします。
○死を選択する気持ちに身を捧げる
――観客の立場でも、舞台は感動を共有する独特の雰囲気があると感じます。さて、今回出演される舞台『この熱き私の激情』は、ネリー・アルカンの内面を7人で演じ分ける内容です。これもまた異質な作品ですね。
すごくアーティスティックです。ネリーさんがお書きになった原作をもとに、そこから抜粋した言葉をコラージュして戯曲化しています。彼女がどのように存在して、その中で女性として受けた苦しみだったり、痛みだったり、怒りだったり、描かれるのはそういった彼女の闇の部分です。
著書は複数冊あって、唯一日本語に訳されている『ピュタン(原題:Putain)』のみ読みました。
彼女の内面で起きている苦悩が非常に繊細な言葉で書かれていて、胸の奥に深く突き刺さります。高級コールガール時代の赤裸々な話も書いてあって、エキセントリックかつ衝撃的な内容です。
なんと言うか……彼女の内面を一言で表すと「混乱」しています。読み進めていくと、その思考の中に引きずり込まれるような感覚。