奥様はコマガール (32) 強情な妻の憎まれ口を押さえつける方法
僕が「別にいいよ。
次から気をつければ」と言っても、チーの説明は終わらない。
「いや、ちゃんと理由を聞いて。
忘れてたわけじゃなくて、これには事情があって……」と延々続くわけだ。
これをされると、僕はますますイライラしてしまう。
正直、歯ブラシなんか元に戻しさえすれば、なんの問題もないわけで、それをしなかった理由や事情には興味がない。
「ごめん。
次から気をつける」と言ってさえくれれば、何事もなく、すぐに終わるのだ。
聞くところによると、チーは子供のころから素直に「ごめんなさい」が言えないタイプだったらしい。
チーのお母さん(以後チーママ)に怒られたときも、つい反射的に憎まれ口を叩いてしまい、何度もチーママを呆れさせたとか。
「こら、チーちゃん! ちゃんと謝りなさい! 」と鬼の形相で迫るチーママに「イヤでーす」と反抗を重ね、「謝るまで許さないよ!」と言われると「許してくれなくても結構でーす」と口を尖らせる。
「まったく、あんたは本当に口が減らないね!」「口はひとつしかないのに、それが減ったら大変でーす」「どの口が言うか! 」「この口でーす」やれやれ。
本当に憎たらしいガキである。