さらに、ブラジルの国内市場を中国製品が侵食するようになりました。
ブラジル政府が、ブラジル・レアルの急騰や、人民元の急上昇を許さない中国に対してしばしば不満を示すのには、こうした理由があります。
ただし、競争力の高い国の国民が裕福になるに連れて、競争力が頭打ちから低下に向かうようになるというのは、世界の均衡化につながる動きと捉えることも可能です。
なお、ブラジル政府は、拡大した税収を、大規模なインフラ・プロジェクトや低所得者対策などを通じて国民に還元することに積極的です。
さらに、分割払いでの物品購入が社会のあらゆる階層で大きく増加したことや不動産ブームもあり、同国では近年、消費支出が急拡大しています。
これらを受け、通貨が大きく上昇したにもかかわらず、ブラジルでは物価上昇圧力が高まりました。
昨年10-12月期の実質GDP成長率は、輸出の軟調および輸入の増加を財政支出を通じての内需の拡大で補ったことなどから、かろうじてプラスとなったものの、鉱工業生産は今年1月に前年同月比▲3.4%を記録し、5ヵ月連続のマイナスとなっています。
ただし、実質GDPや鉱工業生産などの指標は量を重視したものであり、経済の動向を映し出すのに限界があるということを理解しておく必要があります。