壮絶なレイプシーンから始まる――世界中で物議を醸した『エル ELLE』が問いかけるもの- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#20

2017年8月25日 19:30
 

◼︎衝撃作『エル ELLE』が世界中で物議を醸したワケ

※本作は過激なレイプシーンを含んでおります。そのような描写が苦手な方や、嫌悪感のある方は鑑賞にご注意ください。

第89回アカデミー賞・主演女優賞ノミネート、第74回ゴールデン・グローブ賞・主演女優賞、外国語映画賞受賞など全世界で125ノミネート、64の賞を受賞した話題作『エル ELLE』。

壮絶なレイプシーンからスタートする衝撃的な本作。

この作品が世界中で物議を醸している理由は、強烈なキャラクターを持つ主人公・ミシェルがレイプ犯に向けてとる「ある不可解な行動」にあります。

そして、本作がサスペンスでありながら、全編を通じてウィットに富んだブラックユーモアに溢れ、コメディとして仕上がっている点も、賛否が分かれる一因といえるでしょう。

被害者が「被害者らしく」あることを求められる世間に対し、常識やモラルなんてクソくらえ!と真っ向から挑みかけるようなミシェルの強烈なキャラクターは、「女性の権利にとって革命的である」と賛成派から多数の支持を集めています。しかし一方で、そのあまりに衝撃的な展開に異を唱える否定派も存在しているのです。

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◼︎身の毛もよだつ衝撃の展開『エル ELLE』のストーリーは?

豪華な自宅で、猫とふたりで暮らす新鋭ゲーム会社の社長ミシェル(イザベル・ユペール)。

ある日、彼女は自宅で覆面の男から暴行されてしまう。

だがミシェルは警察にも通報せず、風呂に入ると、訪ねてくる息子・ヴァンサンのために、いつもと変わらぬ様子で寿司の出前の注文をする。

翌朝もいつもと変わりなく出社したミシェルは、合間に病気の検査、そしてまた犯人が来たときのための武器を購入を済ませる。そしてその晩、協同経営者のアンナとその夫、そして自分の元夫・リシャールとのディナーの席で「昨日レイプされたの」とさらりとした報告をするのだった。

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そんなミシェルの元に、まるで見張っていたかのようなタイミングで送信者不明のメールが届く。

さらに会社で残業中にも卑猥なメールが届き、ミシェルは周囲の人間に疑惑の目を向けていく。容赦なくダメ出しをするミシェルを恨んでいる会社の部下たち、元夫で売れない小説家のリシャール、セクシーな向かいの家の主人・パトリック……疑い始めるとキリがない。

そんな中、39年前に衝撃的な犯罪で終身刑となったミシェルの父親が、仮釈放を申請したというニュースが流れる。当時10歳だったミシェルも、事件に何かしら関与しているのではないかという疑惑の目を向けられていたのだった。

二度と警察には関わりたくないと、自ら犯人を探し出そうとするミシェル。だがついに、犯人が暴かれたとき、ミシェルがとった不可解な行動により、犯人よりも恐ろしい彼女の本性も明かされていく――。

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◼︎現在64歳!主演女優イザベル・ユペールの怪演に目が離せない

本作の主演を務めるのは、フランスの大御所女優イザベル・ユペール

舞台やテレビを経て1972年に映画デビューしたユペールは、2001年の『ピアニスト』でカンヌ国際映画祭女優賞を、2002年の『8人の女たち』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したほか、これまで、フランスのアカデミー賞にあたるセザール賞の主演女優賞に史上最多の14回ノミネートされている演技派です。

また、カンヌ国際映画祭の審査委員長や、フランス映画祭の団長、NHKの「ルーヴル美術館」でナビゲーターを務めるなどその活動は多岐に渡ります。

本作『エル ELLE』の主人公について「ミシェルには破滅的なユーモアがあるの。まるで毒を乗せた皿を差し出し、”本当におかわりはいらないの?”と微笑んでいるようでしょう」と語るユペール。

60代とはとても思えない若々しい美しさで、強靭なキャラクターで周囲を惑わせる主人公ミシェルを演じ、第89回アカデミー賞主演女優賞に初ノミネートされました。

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◼︎監督は79歳、オランダ出身の鬼才ポール・ヴァーホーヴェン

世界に衝撃を与えた本作『エル ELLE』を監督したのは、オランダ・アムステルダム生まれのポール・ヴァーホーヴェンです。

自国でキャリアをスタートしたヴァーホーヴェン監督は、1985年公開の『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』からアメリカに渡りました。続く87年公開の『ロボコップ』が大ヒットし、一躍その名を知られると、その後もアーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFエンターテインメント『トータル・リコール』、シャロン・ストーン主演のエロティック・サスペンス『氷の微笑』などで大ヒットを記録します。

その後も『スターシップ・トゥルーパーズ』などヒット作を監督するも、2000年の『インビジブル』以降は、ハリウッドでは自分の撮りたい作品は撮れないと、自国に戻り映画作りを続けていました。

本作『エル ELLE』は、過激で衝撃的な作品を作り続けている同監督のエッセンスがぎゅっと凝縮された紛うことなき傑作です。

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◼︎衝撃の展開。『エル ELLE』が問いかけるもの

女優イザベル・ユペールと、ヴァンホーヴェン監督は、『エル ELLE』を一種のおとぎ話だと捉えていたと言います。

「これは物語だ。現実の生活でもないし、女性についての哲学的な映像でもない。すべての女性がミシェルと同じように行動するべきだと言っているわけでもない」

「解釈とは、映画から与えられた要素を元に、観客がするものさ。さらに観客は、その解釈が正しいかどうかなんて確かめる必要もない」

「すべては単なる可能性だ。それ以上でも、以下でもない。説明すべきはただひとつ、ミシェルの性格のあらゆる側面、それだけだ」とヴァーホーヴェン監督。

この物語から何を感じるかは、見る人次第。

スリリングでアブノーマルなサスペンスでありながら、なぜかエレガントな気品をも漂わせる本作に、あなたも戸惑い、翻弄され、そして常識が覆されるかもしれません。

『エル ELLE』は8月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開です。

◼︎『エル ELLE』公開情報

『エル ELLE』
8月25日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
監督:ポール・ヴァーホーヴェン『トータルリコール』『氷の微笑』
原作:フィリップ・ディジャン『エル ELLE』『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』
出演:イザベル・ユペール『ピアニスト』『8人の女たち』
配給:ギャガ
上映時間:131分
公式サイト: http://gaga.ne.jp/elle
© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP

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