漫画を読んで手に入れたのは、生きやすさと優しい気持ち
漫画の話が苦手だった。ほとんど読んだことがなかったからだ。例えば「あきらめたらそこで試合終了ですよ……?」と『スラムダンク』の名台詞を聞いても、何のことかピンとこないくらいひどかった。実家にいた頃、「お金が減るだけで、得るものはない」と禁じられていたのが原因だと思う。
漫画にまったく触れたことがないわけではない。子どものときに通っていたピアノ教室で、レッスンの待機時間にだけ置いてあった漫画を読んでいた。青山剛昌さん原作の『名探偵コナン』だ。
読むと頭が良くなった気がして嬉しかったし、登場人物にジンやシェリーなど洋酒の名前が使われていて、格好よくて好きだった。
以来、洋酒がどんな味かずっと気になっていたが、大人になって遂に飲めたときには、「これがあの"悪の組織"の!」といたく感動したのを覚えている。
漫画を読まないと「人生損してる」と言われることが多い。悔しくなって、手当たり次第に名作を手に取ったこともある。こなすように読んでいたせいか、そのときはあまり面白く感じられなかったが、こうやって物語の世界と現実とを繋げて読むことができれば、楽しめることに気がついた。
それ以来、禁止されていたときの分を取り返すように、毎月10冊以上は欠かさず読んでいる。