初めまして。官能小説研究家のいしいのりえです。
年間約100作品の官能小説、性描写を含む恋愛小説を読んでいます。
官能小説、というとすこし躊躇してしまうかもしれませんが、すべての作品に共通するのは「好きな人に触れたい」ということです。相手のことが好きだから触れたくなり、結果として、その想いを行為で昇華させているのが官能小説です。
この連載では、これから5回に渡り、5冊の恋愛小説をピックアップし、主人公の切ない純愛と、相手に「触れたい」と感じるまでに至る気持ちを紐解いていきたいと思います。
■今回の教科書金原ひとみ『星へ落ちる』
好きな人ができても一筋縄ではいかないのが恋愛というもの。
10代の頃は単純に、好きな人ができれば付き合いたい、両思いになりたい、と感じます。しかし歳を重ねると、相手を好きになる想いはすこし複雑になってきます。
そのひとつが「好きな人に恋人がいること」。不倫にも言えることですが、障がいのある恋愛は、それにハマる人にとっては恋する気持ちを加速させる傾向にあるようです。
自分だけのものにならない、一筋縄ではいかない恋だからこそ、手に入れたくなる。誰にも見向きされない人よりも、ライバルがいる方が燃えるということです。
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