「まだ産める状態」である私たちの葛藤。モヤモヤの先にあるいくつかの人生とは『私、産まなくていいですか』書評
男性も、自分が産めない身体だからこそ、モヤモヤする部分があるのかもしれない。しかも男性であれば、女性よりもタイムリミットが長い。人生の後の方になっても、若いパートナーを見つければ自分の子どもを持てる可能性は高い。
だけど、可能性が広いのも難しい。仮に結婚した後に子どもが欲しくなったとして、一度結婚した人とお別れして、若いパートナーを見つけることは簡単だとは限らないし、行動にもかなり勇気がいる。だからこそ、産めるのに産まないという決断をする女性も、産めないけれど可能性を探すことができる男性も、子どもを持つかどうかを30代のうちに決めるのは難しい。
「子どもというのはとりあえずというわけにいかない」と考えてしまうのは、私たちの真面目さゆえのことなのではないかと思う。毒親だとか離婚だとか不倫だとか、そんなテーマが日常的に飛び交うインターネットの海と隣同士の生活を送っている私たちにとって、一番の課題はきっと子どもに生まれたことを後悔させてはいけない」ということだ。
色々なことを知っているからこそ、チャレンジが怖い。子どもを心から「欲しい」と思えている人を羨ましく思う人もいるかもしれないが、第一話の中ではそんな人との衝突も描かれている。