「まだ産める状態」である私たちの葛藤。モヤモヤの先にあるいくつかの人生とは『私、産まなくていいですか』書評
国は必死で出生率のアップを目指し、政策を立てている。子どもを持つかどうかは、自分ごとのようで自分ごととも限らない。ただ本を読み進めながら、私たちの抱えるモヤモヤは、自分だけの思い込みではないのだと思うと、少しだけ心が安らぐ。
■幸せは「産む、産まない」で決まらない
第二話では子どもを持った人が離婚する話、第三話では再婚した人たちが不妊治療にチャレンジする話が描かれる。子どもを持つか持たないか、その選択を決断した人々のストーリーだ。
本を読んでみるともちろん、子どもがいるから幸せ、子どもがいないから不幸せだとかは語りきれないことなのだということが分かる。子どもを産めない年齢になったとしても、犬を飼うのもいいし、先進的な不妊治療だってある。養子を持つという選択肢もある。
要は、これだけある選択肢の中から「自分に最良の選択」を選び抜かなければならないことが難しいのだなあと思った。今は昔より自由になって、子どもを持たないことで指される後ろ指の数は減っているのかもしれない。
だからこそ、本気で「持たない」と決めている人にとっては生きやすい社会になったのかもしれない。だけど、福沢諭吉も“自由は不自由の中にある”と言っていた。