ノワール ケイ ニノミヤ 2025年春夏コレクション - 薔薇の想像力
ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)の2025年春夏コレクションが発表された。
薔薇、象徴の網目
花について考えてみて、薔薇ほど多くの象徴性を担っている例は、あまり思いつかない。試みにごく幾つかの例を挙げるのならば、ギリシア神話では、薔薇はその美しさから美の女神ヴィーナスに結びつけられた。一方、キリスト教では、棘のない薔薇が聖母マリアの象徴となるばかりでなく、花の赤い色ゆえにキリストの血と結びつき、殉教の象徴となっている。さらにその形態から、薔薇の花は宇宙の完全さを表す円環の象徴にも重ねられた。
快楽や信仰と関連付けられたこれらの諸相に対して、薔薇はまた、卑金属から貴金属を精錬しようとする錬金術とも結びつけられた。円環の象徴である薔薇は、錬金術的な作業の完成とも関連付けられたようだ。このように薔薇という花は、象徴の世界でさまざまに花を咲かせてきたといえる。
花の優美な造形ばかりでなく、種を宿すという生産の力が、その豊穣な象徴性の背景にはあったかもしれない。
こう見ると、薔薇の多義性は、複雑な二項対立の網目を織りなしている。それは、キリスト教と異教であり、信仰と快楽であり、あるいは伝統と秘儀であり──ここで薔薇の想像力について話を広げたのは、「DARK ROSE」