「自分のために家具を作ってもらうことは自分の物語を描くこと。それには自分はどう生きるのかを決める力が必要でした」。
エッセイストの寿木けいさんはテーブルやキッチン、照明を家具職人やアーティストの方に一から依頼して作ってもらった。大変だけど、豊かで、おもしろくて、楽しい。その制作と思考の過程を聞きました。寿木さん書き下ろしのエッセイも。
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茶室に照明を吊るしてみる。「畳に座ってこの雲のモチーフを見上げてお茶を飲むなんて最高です」(寿木さん)。照明は住空間にまつわるアイテムを提案する新ブランド「井派(IPPA)」から発売予定。

リノベ中の様子。大胆に吹き抜けにして大黒柱や天井を見せている。

前川さん。
ひとつひとつこうして彫る。
こうした思いの濃さは、家具やインテリアなどの細部にも表れるようになりました。
私はあるときから、SNSや雑誌で家の情報を集めることを一切しなくなりました。素敵な家や家具はたくさん載っているけれど、それは誰かの物語であって、私の物語ではありません。他人の物語によって発想の器がいっぱいになってしまい、何も決められなくなった時期があったのです。
これは非常にまずいことです。