
美術館を訪ねるような気持ちで、建築を見ることを目的にお寺へ。 その存在に感じ入る、建築ファンの間でも有名な名作をご紹介する。今回ご紹介するのは、安藤忠雄が手がけるお寺〈本福寺 水御堂〉を訪れました。

水御堂に通じる、2 枚のコンクリートの壁に挟まれ白い玉砂利が敷き詰められた空間は、聖と俗をつなぐ中間帯だという。先に何があるかまだ見ることはできず期待が膨らむ。
平安時代から続く大阪湾を一望する古刹の墓地を通り、茂みを抜けると、そこに突然現れるのはコンクリート造りの壁。中へ足を進めると次に姿を見せるのは池。まるで池に吸い込まれるように階段を下りていくと本堂が現れる。水をたたえ、蓮の花を咲かせる池が屋根となった本堂だから、その名は水御堂。
いかにも安藤建築らしいコンクリート造りの御堂が建てられたのは1991年のこと。現在、淡路島に安藤作品は3つあるが、ここが最初の作品だ。田畑に囲まれた、のどかな寺の本堂らしからぬ建物ができた経緯はこうだったという。本福寺の檀家の一人が三洋電機創業者の井植歳男さん。会社が大きくなったら寺を建て替えると約束するものの、果たせないままに亡くなってしまう。
あとを受けた息子の敏さんが安藤忠雄に相談したことをきっかけに、安藤が初めての寺院建築を手がけることとなった。
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