
美術館を訪ねるような気持ちで、建築を見ることを目的にお寺へ。 その存在に感じ入る、建築ファンの間でも有名な名作をご紹介する。今回ご紹介するのは、白井晟一が手がけるお寺〈浄智寺〉を訪れました。

風が通り抜けにくい分厚い壁に、丈夫な建物を象徴する柱の太さ。モダニズム建築とは距離をおいていた白井作品の一つだということが外観からも感じられる。
鎌倉幕府が制定した鎌倉の代表的な禅寺を「鎌倉五山」といい、その第4位に名を連ねる格式高い浄智寺。自然を生かした緑豊かな境内は、国の史跡に指定されている。近年では、鎌倉・江の島七福神めぐりや、葛原岡・大仏ハイキングコースとしても人気が高い寺院の庫裡の再建を当時の住職から依頼されたのが、昭和を代表する建築家・白井晟一だ。建築を専門に学ぶことなく、独学で建築家になった彼の作風は日本建築らしからぬ石の塊のような建物が多く、近代日本建築の系譜の中でも異色の存在といわれている。
白井が活躍していた時代はモダニズム建築全盛期。鉄・ガラス・コンクリートに代表される工業化された素材・材料で作られ、見た目の特徴は真四角や軽さのある建築物が多くなっていた時代だが、白井はモダニズムとは一線を画し、独自の造形や美的感覚を生かした建築を生み出していった。
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