“しとなった”ふたりにはまったりとした時間が流れるが、若年層の夫婦よりも“最期”が近くに見えている。由美子さんも、「熟年婚=いかに最期を考えるか」だと当時を振り返る。
■日常会話で“死”の話
「婚姻関係でなくては有事のときに病院での面会に立ち会えないのが日本です。結婚するときは、最期までいっしょにいるという覚悟がいりますね。私たちはしっかりした話し合いをしたのではなく、ふだんの会話の中でそういう話がありました。
例えば、スケジュールの都合以外で仕事を断らない人でしたが、お葬式の司会だけは、“自分は葬式顔ではないから”と断っていたんです。“あなたは笑顔のない場所が嫌いだから、もしもの日が来たら、お葬式ではなくて引退式をしてあげる。そのかわり生涯現役で仕事をしたご褒美だから、身体を大切にね!”と話しかけたりとか」
どうやって死んでいくか。そんな議題が日常会話の中でサラリと語られるのだ。
「どちらかが寝たきりになるかもしれませんし、身体に何かあるかもしれない、介護が必要になるかもしれない、死に水を取ることになるかもしれない……。そういったリスクは若い人よりも高いので、結婚するためにはそれなりの“覚悟”が必要になりますよね。
…