くらし情報『夫婦共同執筆の脚本家・木皿泉、仲よしの秘訣は「結局、自分に正直がいちばん」』

夫婦共同執筆の脚本家・木皿泉、仲よしの秘訣は「結局、自分に正直がいちばん」

2018年4月9日 12:00
 

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木皿泉さん撮影/齋藤周造
実は“木皿泉”とは、夫を“トムちゃん”、妻を“ときちゃん”と互いに呼び合う夫婦の共同ペンネームで、お話を伺ったのはときちゃん。これまで2人で『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』『Q10(キュート)』など人気ドラマを執筆し、ラジオドラマ、舞台、アニメ映画などにも脚本を提供している。そして今回出版された『お布団はタイムマシーン』は、絶大な支持を誇るエッセイ集『木皿食堂』シリーズの第3弾だ。

■2人のおしゃべりが融合したエッセイ

「木皿食堂を実際に書いているのは私ですが、私たち夫婦って一緒にいるとき、ずっと話しているんですね。あまりに長く話しているから、たまにどっちが何を言ったかわからなくなるほど。だから原稿の中身は2人の発言がミックスされています。読み返して“このギャグは俺が言ったのに”“でもきっかけは私!”とか、領土問題みたいによく言い合っています(笑)」

妻のつづる言葉に夫の思いが溶け込み、独特の木皿節が完成。2人のおしゃべりの結晶が本書なのだ。

「神戸新聞、日経新聞、一般雑誌、文芸誌など複数の媒体に寄稿したエッセイがまとめられています。正直、好き嫌いでしか書いていないし、私は理屈っぽいし、夫婦でぐちゃぐちゃ言ってるだけで、いいのかなって思うものもあるんですけどね(笑)」

電車の中、空中で指先を振る新興宗教の信者らしき乗客と、バーチャルな『ポケモンGO』でつながる集団には“見えないものを信じる”という共通点があること。デパートの中で、昔出会った人のモノばかり欲しがる女性の主体性のなさに馳せる思い。全財産が17円で、20円の食パンのミミも買えなかったけれど平気だった若き日の自分……。何げない日常のハッとした出来事をすくい上げ、思いを膨らませて読者に共感、笑い、うなずきを与えるエッセイが続く。

「何かを見立てるのは私、けっこう得意なんです。トムちゃんのほうはテーマの切り方が上手だし、難しい現代思想の本なんかも読んでいるから、私が何か言うと“これってこういうこと?”って的確な返事をくれます。すると書くことがまとまっていくんです」

文章には、書いている人の人柄がにじみ出るというのが、2人の持論。エッセイならばなおさらだ。木皿泉の脚本のファンは、本著で脚本の世界観はどういった思想に裏づけられているかを確認できる。そして、ファンもそうではない人も、最終的には木皿泉そのものに魅了されていくことだろう。

■愛は壊れ物と知っているから仲が良い

ときちゃんとトムちゃんが出会ったのは約30年前。現在は業界でも有名なオシドリ夫婦で、時にはケンカをすることがあっても、決して長引かないのだそう。

「また仲よくなるのを、2人とも知っているから……あと同時に、決定的なことが起こりうるっていうのも、わかっているからかな。お別れとか、最悪なことはいつだって起こる可能性がある。だからそうならないようにしようって、お互い思っているんです」

トムさんは2004年に脳内出血で倒れ、以来ずっと介護が必要。木皿泉の闘病日記を読んだ結婚直前の女性に、「ここまで夫にできるかと不安。マリッジブルーです」と言われたときちゃん、「私の幸せは私だけのもの」と本書で憤る。

「もともと私は、人と自分を比べません。他人のフィールドで勝負するより、ほかで勝つことを考えたほうがいいでしょ?私は私!(笑)」

自分の幸せは自分だけのもの。誰かと比べて“できるできない”で一喜一憂することに意味はないのだ。

「仕事だってそう。あの女優さんがキレイとか、この脚本家がうまいとかって、結局、それ以上が出てきたらアウトじゃないですか。だからこそ“私は人のやらないことをやっていこう”って考えて、行動しなきゃいけない。ちなみに木皿泉のエッセイでは、夫婦仲よしな様子を書くことが、それにあたります!」

仕事上、必要に迫られてといえばそれまでですが、2人の熱量の高い会話は刺激的で、思いやりを与え合う日々は、素直に「すてきだな」と声に出してしまう温かみがある。

「仲のよさをうらやましがられるの、実はよくわからないんですけどね(笑)。みんなも仲よくすればいいじゃないって話ですし。また、私たちも我慢すべきところは我慢しているんです。ただそれを“我慢”とは思っていないけど(笑)」

しかし、それほど大好きでも、前述のとおり添い遂げられない可能性は忘れない。

「添い遂げて永遠の愛もいいけど、何らかの理由で別に暮らす必要が出てくるかもしれない。私は結局、自分に正直がいちばんだと思います。これはトムちゃんも一緒。お互い正直になってストレスを手放すことこそが、仲よくなれる秘訣かもしれませんね」

愛を壊れものだとわかっているからこそ、大切にいつまでも光らせようとするときちゃん。木皿泉の作った光は物語を形作り、モニター越しに私たちを楽しませ続けてくれるだろう。

■ライターは見た! 著者の素顔

「私が家を離れるとき、トムちゃんはショートステイに行くんですが、何日か後に帰宅すると、恥ずかしがって寄ってこないの」と、ときちゃん。なんと初々しい!「トムちゃんは愛情を受け取るのが上手。病気で動けないからありがたみがわかるのかもしれないけど、私も彼の不自由を見て自由の価値がわかる。病気前の生活に戻りたいとか、一切ないです。だって今しかないから」。常に“今”を生きる2人だから、いくらしゃべれど新鮮な関係なのかもしれません。

<プロフィール>
きざら・いずみ◎夫婦で共同執筆の脚本家、小説家。夫・和泉務1952年生まれ、妻・妻鹿年季子1957年生まれ。ともに兵庫県出身。テレビドラマの代表作に、向田邦子賞受賞作『すいか』をはじめ、『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』などがある。

(取材・文/中尾巴

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