2019年12月7日 11:00
生きる勇気の種を撒き続けて40年、心の隙間に寄り添う「べんさん」のやさしい歌

シンガー・ソングライターたかはしべんさん撮影/伊藤和幸
「べんさ〜ん!」
子どもたちの大きな声に招かれ手作りのステージに、たかはしべんさん(70)が登場した。10月末、埼玉県志木市みわ幼稚園のホールには、年少から年長までの園児全員が集まっていた。べんさんはギターを抱え、間を取りながら子どもたちに話しかける。
「あのさ、べんさんさ」
べんさんの声は不思議だ。低く響く声でそう言うだけでクスクスと笑い声が起こる。
「あのさ、べんさんさ」
繰り返すと子どもたちの笑い声は大きくなり、小さな頭がさざ波のように揺れる。
「あのさ、べんさんさ、みんなのお父さんやお母さんが生まれたころから歌ってて、歌のお兄さんって言われてたんだ。でも40年もたってさ、年とっちゃったからさ、歌のおじいさんって呼ばれるようになりました。やだなあ」
■40年間で5000公演
子どもたちはすぐにべんさんの世界に吸い込まれていく。べんさんは、「お隣のお友達とギュッてしてみよう!」と声をかけ、こんな歌を歌う。
「例えば夏の暑い午後/大好きなアイス食べていて/ポトンと土に落っことし/泣きたくなることあるでしょう/そんなときそんなとき/ちっちゃな声でおまじない/涙の止まるおまじない/ねーギュッてして」
…