
ただでさえ負担が大きい排泄ケアは、相手が毒親ともなれば一層つらさが増す※写真はイメージです
暴言や暴力、過干渉などで子どもを苦しめる「毒親」。そんな親が高齢になると、新たな問題が生じてくる。嫌いな親や自分を苦しめる親の介護に直面したら、どうすればいいのか。家族をめぐる問題に詳しいジャーナリスト・石川結貴さんが、著書『毒親介護』(文春新書)での取材をもとに、毒親に悩み苦しむ娘たちの声をレポートする。
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■「オマエなんか男の味も知らないくせに」
「私は母子家庭で育ち、給食費も払えないほど貧しい生活でした。母は仕事を掛け持ちしていましたが、次々に男をつくっては貢いでしまう。子どもの前で性行為をしたり、急にキレて激しい暴力をふるったり。そんな母には嫌悪感しかありませんでした」
静岡県に住む尚子さん(仮名=59)は重いため息をつきながら言う。歩行障害と心臓疾患を抱える母(84)は要介護2。独身の彼女は母を在宅介護しているが、10年前までは絶縁状態だった。
尚子さんは高校卒業後に実家を離れ、派遣社員として働いた。何度か恋愛もしたが結婚に踏み切れなかったのは、過去のトラウマのせい。母の愛人に身体を触られるなどした経験から「男性が怖い」
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