2020年11月30日 07:00
「この家は悪い組織に監視されている」妄想にとりつかれた統合失調症の父と家族の苦悩

『心を病んだ父、神さまを信じる母』より
小学2年生の女の子が、ある日突然、父から《この家は悪い組織に監視されている。盗聴器とカメラがしかけられている。すべて見られている。となりのおばさんもやつらの仲間だ気をつけろ!殺されるぞ!》という手紙をもらったら──。
これは漫画家・ゆめのさんの幼少期におきた出来事だ。父、母、兄と暮らす4人家族のゆめのさんだったが、小学校低学年のころに父親が統合失調症を発症し、被害妄想に基づいた言動を繰り返したり、街を徘徊するようになっていた。
■父の病気は幼心で理解するには複雑すぎた
統合失調症は “見張られている”“悪口を言われる”などの幻覚や妄想の症状や、意欲の欠如などの症状が現れる精神疾患だが、このころのゆめのさんの父親に目立っていたのが幻覚と妄想だった。統合失調症のはっきりとした原因は解明されていないが、100人に1人は発症するという珍しくない病気だ。
ゆめのさんは今年、父の統合失調症と向き合った幼き日の実体験を描いたコミックエッセイ『心を病んだ父、神さまを信じる母』(イースト・プレス)を上梓。冒頭の手紙のシーンなどショッキングな部分もあるが、漫画のタッチが朗らかでほのぼのとしているので、恐れることなく、家族の話を受け入れることができる。
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