
江口のりこ
「この女優、好きだわぁ」と最初に意識したのは2010年。NHKEテレの5分ドラマ『野田ともうします。』で主演したときだ。柘植文の漫画原作がもつ世界観を、見事に映像化した秀逸なドラマだったが、特に江口が演じた野田さんというキャラクターは完璧な再現度だった。
グレーのトレーナーにジーンズ、長い黒髪は真ん中分けで三つ編み1本。真面目で謙虚、礼儀正しくて、世間や流行には流されない。太宰治やドストエフスキー、出身地である群馬県をこよなく愛す女子大生の野田さんを淡々と演じた。
■どの出演作にも「深い爪痕」を残した
主演映画もある。タナダユキ監督の『月とチェリー』だ。大学の男だらけの官能小説サークルで紅一点、自ら官能小説を書いている女性という役だったが、堂々と飄々と性を語る姿に好感が持てた。脱ぎっぷりもよかったが、ちっともいやらしくない。そう思ったのは、江口が「男が求める理想の女」ではなく「自ら主体的に動く女」だったから。
ここ数年の活躍は目覚ましく、江口の存在感はより大きくなっている。もちろん全国的に知名度を上げたのは、昨年の『半沢直樹』の国土交通大臣役ではあるが、それ以前から人気ドラマの脇をきっちり固める名バイプレイヤーだった。
…