
冨士眞奈美
女優・冨士眞奈美が語る、古今東西つれづれ話。今回は、『細うで繁盛記』について振り返る。
■嫌われ役が意外にも人気に
私の思いがけない代表作のひとつに『細うで繁盛記』がある。
原田正子に扮した私は、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけ、伊豆弁で「おい加代!犬に食わせる飯はあっても、おみゃーに食わせる飯はにゃー!」なんてまくしたて、憎まれ役に徹した。
本来であれば、視聴者からは疎まれ、嫌われる役のはずなのに、インパクトが強かったからか、意外なことに人気を得るまでになってしまった。原田正子をパロディーにしたテレビCMまで製作され、憎まれ役が人気者になることもあるんだなんて、びっくらこいただよ。
憎まれ役にもかかわらず、みなさんから支持していただけたのは、主演の新珠三千代さんのおかげにほかならない。
ドラマの中で、私は新珠さんをいじめる役だったけど、新珠さんはいつも私に対して、
「いいのよ眞奈美ちゃん。もっとやってちょうだい。蹴ったっていいのよ、殴ってもいいのよ」なんて声をかけてくださった。
いじめればいじめるほど視聴者が喜ぶから、新珠さんも「もっとやって!」とリクエストされる。
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