「これから検査を継続して、予後が本当にいいのかも調査してほしい。私たちが声をあげることで、ほかの人も声をあげられる状況になってほしいと思います」
11年、周囲に言えずに生きてきた詩穂さんの実感のこもる言葉だ。
また、裁判を通して知り合った同じ境遇の仲間の姿に、詩穂さんは胸を痛めている。
「私もいろいろなことをあきらめたけれど、がんに罹患した年齢が低いほどあきらめるものが多い。身体と心に負担を抱え、恋愛も結婚もしない、1人で生きていく、と」
大学進学も就職もあきらめ、生命保険にも入れないと話す原告の仲間。せめて相談し合えること、共感し合えることの意義は大きいと詩穂さんは改めて感じている。
「裁判を通して(事故とがんの)因果関係を明らかにしてほしいし、乏しい医療支援も改善してほしい」
そして、同じように苦しんでいる、福島県の300人近い甲状腺がんの子どもたちを勇気づけたい─、そう願っている。詩穂さんは、何度も「私より若い人」「私より病状が悪い人」「まだ1人で苦しんでいる人」を慮っていた。
県外避難で生じた罪悪感
画面越しに、わかなさん(26)は静かに呼びかけた。
「つらくても、生きていてください」
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