
『悪魔のようなあいつ』(1975年 TBS系)に出演した際の荒木一郎
女優・冨士眞奈美が語る、古今東西つれづれ話。今回は、自身の不思議な結婚生活を振り返る。
『細うで繁盛記』(1970年日本テレビ系)、『パパと呼ばないで』(1972年日本テレビ系)などに出演した後、私は脚本家である林秀彦(故人)との結婚を機に、芸能界を引退した。
不思議な10年間の結婚生活
当時、私は35歳。エッセイや小説の執筆といった活動は続けていたものの、10年後の1984年に離婚するまで、ドラマや映画には一切出演しなかった。句会も欠席。
それまでいろいろな作品やCMに出演させていただいたこともあって、貯金もそこそこあった。「これだけあれば暮らせるだろう」。そんな考えもあって、私は表舞台から降りることを決めた。
最も脂が乗るだろう時期に家庭へ入る。もし、このとき女優を続けていたら、また違った人生があっただろうなとは思う。実際、いい舞台や有名監督さんからお話をいただくなど、たくさんオファーがあった。親交のあったプロデューサーからは、「もうそろそろいいのでは」と家まで直談判されたこともあった。
でも、夫が、私の芸能活動を嫌がったため、いざこざを恐れて私は結婚すると決めてからすっかりその気をなくしていた。
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