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ある日突然、家族が事件に巻き込まれて、自分が“遺族”になったらーー。加害者に謝罪を求めて会おうとしても、簡単には叶わないという現実。一方で、加害者になってしまった場合もまた、直接謝罪したくても“制約上”できないという「高い壁」が立ちはだかっていた。NPO法人『World Open Heart』理事長で、犯罪加害者と被害者、双方の支援団体『Inter7』の発起人でもある阿部恭子さんが伝える。
事件に奪われた日常
もし、家族が他人に殺害されたとしたら、犯人に求めるべきは死刑なのか。死刑を求めない家族は、被害者とはいえないのだろうか。
被害者遺族を経験しながら死刑廃止の立場を表明し、被害者と加害者の対話の意義を訴えてきた原田正治さんは、一部の人々からは「理想的な被害者」として注目され、また一部の人々からは「理想的な被害者ではない」と、時に批判を浴びてきた。
事件後、原田さんが歩んできた遺族としての道のりは過酷である。当時、助けてくれる人も、相談に乗ってくれる機関もなく、次々と降りかかる試練に、すべて家族だけで対応しなければならなかった。
1983年、原田さんの弟・明男さんが30歳のとき、突然、仕事中に亡くなり、居眠り運転による自損事故と判断された。
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