松本清張はいつの時代も必要な存在
「原作がある場合、脚本というのは作家の精神性と付き合う作業。清張先生は奥行きが深く、文学として完成されている。ですから、とても向き合い甲斐があって、飽きないんです。『ここまで脚色したら怒るかな?』とか、そういうことを想像できる原作のほうが面白い」
何より松本清張は、「人間を描いている」と竹山さんは語る。
「『熱い空気』ではチフス菌が登場しますが、今リメイクするなら新型コロナウイルスに置き換え、家庭の内幕を暴く話にすることもできる。清張作品が時代を超えて、何度もドラマ化されるのは、時代が変わっても、人間は変わらないからですよね」
松本清張が大衆から愛される理由。それは学識を要するような高尚な話以上に、その時代を生きる人間の本能、苦悩、葛藤、欲望をあぶり出しているからにほかならない。
「清張先生のほとんどの作品は、地獄のような状況を描いている。その地獄の中で、人間はどうやって生きていくのか。のたうち回る人間の姿を描いているから、私たちは見たくなる。清張作品は、刺殺といった加害描写が少ない。かわりに、毒殺や自死、事故(に見せかけるケースも)が多い」
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